人生のたよりなさ 六

 パイオニアの行った管理職への退職勧奨は、会社への信頼を拠り所として生きてきた私たちに大きなショックを与えました。会社に依存した行き方を反省するとともに、会社・仕事・趣味・家族・健康といった限りあるものを心の拠り所として生きざるをえない人生の本質的な〈たよりなさ〉というものをみつめるいい機会だと思います。

 確かなものを拠り所にしたい、その拠り所をより確実なものにしたい-こういう切なる願いをもたざるをえないということは、逆に、限りある世界の滅びゆくものを価値として築かれる人生の本質的なたよりなさを証ししているのではないか。

 会社や事業はもとより、この身も縁にあえば明日にも滅ぶ命です。生まれたものは滅び、造られたものが壊れるのは自然の姿ですが、その自然の摂理に逆らっても、己の分別心をたてて人生を確かにしたいと願うのも人の心です。どこをとっても不確かで、たよりない人生を確かにするために私たちは、金・地位・名誉・事業といった道具だてを立派にし、確かな自己像を確立しようと努力しているのです。その努力が人生でしょう。

 たよりなさは、私たちの世界の特徴ですから、たよりなさをそのまま受け入れ、あるがままの自然の命から私たちのなす努力・計画・計算を照らしてみる時、生き方の不自由さ、窮屈さが知られてくるのではないでしょうか。

 1993-7-1
by zenkyu3 | 2017-03-15 08:43 | 樹心会々員からのお便り | Comments(0)