2017年 05月 15日 ( 1 )

地獄あることなし

  一二六、幕府の儒官林大学、
  守山駅に逗留の際、永願寺に師の講演ありと聞き、
  参詣して親り問うて曰く、地獄は実にありや。
  師曰く。必ずあることなし。
  林曰く。それは自語相違ならずや。
  師曰く。罪なきものにはこの世の獄屋もなし、
  罪の軽重によりては、無量無辺の地獄あり、と。
  林大学、則ち大に感ずる所あり。
  其の後、日毎に参詣聴聞す。
  後に至りて師、よき弟子を設けたりと仰せあり。

  (香樹院語録) 
 

 「地獄は実にありや」と聞く林大学頭には「死後の地獄」の心配があった。それを見透かして「必ずあることなし」と。案の定、林大学頭、香樹院師の言葉の罠にかかる。「それは自語相違ならずや」。香樹院師答えて「罪なきものにはこの世の獄屋もなし」と。信の一念に罪消えて仏のお心の中に生まれた念仏者に「死後の地獄」はない。しかし「罪の軽重によりては、無量無辺の地獄あり」。罪を造れば因果の道理で、自ら地獄を造って、そこへ自ら堕ちていく。当然ではないか、と。「林大学、則ち大に感ずる所あり」。林大学頭、自らの地獄行きを悟ったか。師のご化導を仰ぐことになった。

 南無阿弥陀仏

 柏原祐義・禿義峯編「香樹院語録」


by zenkyu3 | 2017-05-15 06:00 | 香樹院語録を読む | Comments(0)