楽々と仏になる

  二九八、安政五年正月十日参上したれば、
  もはや終焉ほど近くなり給いしと承り、
  御枕許にて御顔を見守りまいらせて居たれば、
  御側におりし長五郎が、
  此人は江州の了信で御座ります。 と申し上げぬ。
  その時師は御口の中にてかすかに、
  昔は命にかけて御求めなされた仏法を、
  今は楽々と足手を運ぶばかりで、
  我が身が仏になることをきくのなれば、
  よくよく聞いて帰られよ。 との仰せなりき。

  (香樹院語録) 

 香樹院師は一月二十三日になくなる。「昔は命にかけて御求めなされた」とはお釈迦様のこと。「今は楽々と足手を運ぶばかりで」とは香樹院師の所。今までは「我が身が仏になる」ほどの大事が(わたしの所で)楽々と聞けたが、「もはや終焉ほど近くなり給いし」。もう直に聞けなくなるから「よくよく聞いて帰られよ」と。安政五年(1958)は井伊直弼が大老に就任、安政の大獄が起きた。

 南無阿弥陀仏

 柏原祐義・禿義峯編「香樹院語録」


by zenkyu3 | 2017-06-27 06:32 | 香樹院語録を読む | Comments(0)