仏に任せたる衆生に迷いなし

  八二、公儀ある民に我が田地なし。
  先祖ある子孫に我が家なし。
  親ある子に我が身なし。
  主人ある家来に我が命なし。
  師ある弟子に我が智慧なし。
  夫ある女に我が財なし。
  されば公儀に任せたる民に刑罰なし。
  先祖に任せたる子孫に過なし。
  親に任せたる子に不孝なし。
  主人に任せたる家来に不忠なし。
  師に任せたる弟子に迷いなし。
  夫に任せたる女に不貞なし。
  風に任せたる柳に雪折れなし。
  仏に任せたる衆生に迷いなし。

  然るに、任すまじき事ただ一つあり。
  「其のまま我が心にまかせては、
  必ず必ず誤りあるべし」と、先徳はのたまえり。
  今日の我れ人は、生々世々、我が心に任せし故、
  迷いの凡夫とはなりしぞかし。

  (香樹院語録)   

 わが心のままに生きることを放逸無慙という。わが心に騙されて、騙されていることにも気づかないほど巧みにわれらは騙されている。騙されていると気づけばわが心を疑うが、騙されているという智慧はわが心からは決して出てこない。わが心が騙しているからである。わが心を信ずるを自力、仏のお心を信ずるを他力という。わが心を捨てて仏を信ずる、これが一度の宗教的な決断である。

 南無阿弥陀仏

 柏原祐義・禿義峯編「香樹院語録」


by zenkyu3 | 2017-04-21 08:45 | 香樹院語録を読む | Comments(0)