得て見やれ

  二八四、江州の嘉右衛門、田植えの最中にし切りに後生を苦にし、
  田の仕事も打ちすてて伊勢国御巡回先え馳せ参じ、
  一言の御教示を蒙りたしと願いしに、
  急げばまわれと云うことがあるぞよ。との仰せなりき。
  其の後ある時、恐れながら信心の得られし味を尋ね申したれば、
  師暫くして仰せに。得て見やれ、その味は知れる程に。

  (香樹院語録)   


 ここでの香樹院師は答えが出かかっている生徒にあえてヒントを与えない先生のようです。江州の嘉右衛門のように、わたしも疑問が起きると仕事を抜け出して同じ新宿区内の先生の住居へ走って行った。先生の事情などまったく考えていなかった。びっくりした顔をしても、なんだとも、どうしたとも言わない。先生はいつだって聞いたことに丁寧に答えてくれる。

 当時のわたしはわかりたい一心でまったく余裕がなかった。竹内先生でなかったら、わたしはどうなっていたろうか。先生の事情などまったく考えていなかった。江州の嘉右衛門のように、わたしも一度だけ「そんなに急ぐことはない」と言われたことがある。「得て見やれ、その味は知れる程に」。香樹院師、もうじき信が開けると見ておられたのでしょう。

 南無阿弥陀仏

 柏原祐義・禿義峯編「香樹院語録」


by zenkyu3 | 2017-01-21 06:48 | 香樹院語録を読む | Comments(0)